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この話は、三平の2年目の話です(全体の地図を見る →)

第2部 2年目 財布と会社を整える 第10話

たった120万円。でも初めて、通帳が怖くなかった

2年目の最後の日、未来の口座は120万円。3,000万円には遠い。でも通帳を開いて、初めて不安ではなく、少し誇らしかった。金額より、仕組みが変わった年。

朝の台所のテーブルで、紺色の通帳を持つ手元

01 3月31日、銀行の機械の前で

2年目の最後の日。閉店後、銀行の機械で、未来の口座の通帳を記入しました。印字の音が止まり、最後の行に数字が出ました。1,200,000。

120万円。3,000万円という目標から見れば、25分の1です。誰かに自慢できる額ではありません。機械の横で、誰かが待っていました。僕は通帳を胸に当てて、場所を譲りました。

でも、僕はその場で、通帳を閉じられませんでした。1年前の同じ日、この通帳の残高は0円でした。作ったばかりで、まだ何も入っていなかった。8年間、月末のたびに目をそらしていた通帳を、僕は今、開いて見ている。

不安ではなく、少し誇らしい。通帳を見てそう感じたのは、店を始めてから、初めてのことでした。

通帳を見て、初めて、目をそらさなかった。

あなたが最後に、通帳を開いて「よし」と思ったのは、いつですか?

02 「余ったら貯金」の8年と、「先に入れる」の1年

数字だけ並べます。「余ったら貯金する」でやってきた8年間、僕の貯金はほぼ0円でした。「先に未来の口座へ入れて、残りで暮らす」に変えた1年で、120万円。

差を生んだのは、収入ではありません。2年目の売上は、腰で休んだ月もあり、1年目とほとんど同じでした。変わったのは、お金の流れる順番だけです。

楊さんの講座に、こんな言葉があります。「投資は始めるより続けるほうが難しい」「人間の判断を減らす」。月末に「いくら残そうか」と考える判断を、僕は1年で12回やめました。先に引かれるから、考えない。考えないから、続く。先取りは、我慢ではなく順番だと、楊さんは言いました。我慢なら、8年続きませんでした。順番なら、1年続きました。その12回の分だけ、僕は店のことを考える時間が増えました。

放っておくと、どうなっていたか。このペースなら、3,000万円まで25年です。だから僕は3年目に、家と車と店という3つの入口を通ることになります。でも、それは次の年の話。2年目は、金額ではなく、仕組みを作る年でした。

変わったのは収入ではなく、お金の流れる順番。

03 「120万円って、多いの?」

夜の台所のテーブル。夫婦の手元と、開いたノートと電卓

その夜、台所のテーブルで、妻と通帳を開きました。妻は120万円の行を見て、聞きました。「これって、多いの?」。

「3,000万円の4%」「ふうん」「でも、去年の今日はゼロだった」「それは知ってる」。妻は湯のみを持ったまま、しばらく通帳を見ていました。そのあと、妻は小さく「よかったね」と言いました。僕はその一言を、通帳より大事にしています。

12月の行には、20万円の入金があります。妻が、車の買い替え用に貯めていたお金です。腰の夜に「責任は持たないけど、お金は出す」と言った妻は、本当に出してくれました。

「あと60万円で、6か月分ね」。妻が言いました。備えの目標180万円を、妻は覚えていた。僕より先に、引き算をしていたのです。

楊さんに最初に言われた言葉を、思い出しました。「最初の1年は、金額より仕組み。仕組みができれば、金額はあとから付いてくる」。その夜、妻が言ったのは、仕組みができた人の言葉でした。

妻は僕より先に、引き算をしていた。

04 2年目の12か月を、1枚にした

通帳の12行を、棒グラフにしました。月5万円で始まり、腰を痛めた8月から月10万円。12月に妻の20万円。1月に「崖」の話を断り、3月に120万円。

未来の口座の2年目の残高の棒グラフ(万円・試算):4月5→7月20(法人に)→8月30(腰・月10万円へ)→9月40(発表会)→12月90(妻の20万円)→1月100(崖の話)→3月120

グラフにして分かったことがあります。伸びが変わった所は、全部、こわい思いをした月でした。腰で先取りを倍にした8月。発表会で店の現金を見せた9月。借りて増やす話を断った1月。ただ、こわかった月に動いた理由は、どれも「もう二度と」でした。

講座の言葉を借りれば、「複利の一番の敵は待てないこと」「竹は地面の下が長い」。2年目の僕は、まだ地面の下にいました。でも、根は12本、伸びていました。根が伸びているかどうかは、通帳の行数で分かります。12行。1年目は、1行もありませんでした。

この1年で学んだことを、順に並べます。口座を3つに分ける。先に入れて残りで暮らす。法人にして会社に残す。節税より整理。決めてからトラブルは起きない。売上は高い買い物。備えは現金で6か月分。数字はスタッフに見せる。借りて増やさない。10個目が、この120万円でした。

伸びた月は、全部、こわかった月だった。

05 通帳を、月に1回、2人で開く日を決めた

春の朝、店の入口の戸を開ける男の後ろ姿。足元に桜の花びら

通帳が怖くなくなった理由を、僕なりに考えました。見る数字が決まったからです。店・生活・未来の3冊。それぞれの役割が分かっていれば、残高はただの数字になる。怖かったのは、何の数字か分からない1冊を、月末に開いていたからでした。

そこで、家でも発表会を始めました。毎月第1日曜の朝、妻と3冊の通帳を開く。10分で終わります。店の発表会を家に持ち込んだ形です。妻は「責任は持たない」と言いながら、12月の20万円の行を、毎回指でなぞります。

18歳になった息子が、ある朝言いました。「父さん、最近あんまり怒らんね」。通帳が怖くなくなると、怒らなくなる。それは、自分では気づけないことでした。息子には、その朝、3冊の通帳の役割だけ話しました。中身の数字は、まだ見せていません。それも「見せるお金と見せないお金」の線です。

通帳が怖くなくなると、人は怒らなくなる。

06 今日やること:今日の日付と、残高を1行書く

今日やることは、1つだけです。今日の日付と、「未来」の口座の残高を、紙に1行書いてください。 0円なら、0円と書いてください。それが、あなたの1行目です。紙は、未来の口座の通帳に挟んでください。来年、通帳を記入するとき、その紙が一緒に出てきます。

来年の同じ日に、2行目を書きます。2行目を書くとき、増えた額より、この1行目を書いた日のことを思い出すはずです。僕の1行目は、2年目の4月1日、0円でした。

次の話は、3-1「売上100万円より、経費100万円のほうが簡単」です。3年目の春、僕は広告の見積もりを前に、売上を上げる計画を立てていました。楊さんは、こう聞きます。「その100万円、いくら残る?」。

0円でも、1行目は書ける。

情報元

  • 講座 第10回「投資は始めるより続けるほうが難しい」「人間の判断を減らす」(講義ノートより)
  • 講座 第2回「複利の一番の敵は待てないこと」「竹は地面の下が長い」(講義ノートより)
  • 講座 第3回「生活費6か月分は現金で」(講義ノートより)

※ この物語はフィクションです。数字は試算で、将来の結果を約束するものではありません(くわしくは「この連載について」)