第3部 3年目 売上より利益。身軽にして現金化 第10話
家と車を手放したら、1,000万円が動いた
3年目の大晦日、未来の口座は約1,000万円(試算)。増えたのではなく、家と車に眠っていたお金が動かせる形に変わった。減らしただけの1年が、いちばん動いた1年だった話。

01 年末の朝、借りた部屋のカーテンを開けて
3年目の12月31日。借りた部屋のカーテンを開けると、ベランダの向こうに、見慣れない街の朝がありました。妻はまだ寝ています。僕は台所でお湯を沸かしながら、スマホで未来の口座を開きました。
残高は、約1,000万円でした。2年目の終わりは、120万円。3年前の僕は、年商2,000万円で貯金がゼロでした。
でも、僕はその数字を見て、飛び上がりはしませんでした。お金が増えたわけではないと、分かっていたからです。家と車の中に眠っていたお金が、動かせる形に変わっただけ。それでも、画面を見ながら、お湯が沸く音をしばらく聞いていました。
3年前の僕に、この画面を見せたい。そう思いました。あの頃の僕は、家と車と店を持っていて、通帳の中は空っぽでした。
家と車の中で、お金はずっと眠っていた。
あなたの持ち物の中に、動かせないお金は、いくら眠っていますか?
02 もし3年目に、何もしなかったら
逆を数えてみます。もし3年目に家も車もそのままだったら、何が起きていたか。
家は、固定資産税が年に十数万円、修繕の積み立てが年に約12万円、ローンの利息が年に約24万円。車は、月5.8万円で年に約70万円。足すと、持っているだけで年に約120万円が出ていく計算でした(僕の場合の試算)。10年で、約1,200万円。
つまり、今回動いた約1,000万円は、「10年分の、持っているだけで出ていくお金」とほぼ同じ額でした。手放したから1,000万円が手に入ったのではなく、手放さなければ、同じ額が10年かけて消えていたのです。
もう1つ、怖いことがあります。体が止まった月でも、固定資産税も、車の保険も、止まりません。2年目に備えの口座を作ったとき、楊さんは「固定費が多いほど、備えは早く尽きる」と言いました。身軽になるとは、止まっても耐えられる月数が増えることでもありました。
動いた1,000万円は、10年分の「持つお金」だった。
03 年末の「発表会」で、妻が聞いたこと

朝ごはんのあと、妻と2人で「発表会」をしました。講座の第14回で楊さんが言った、家族でお金を見せ合う会です。焼肉ではなく、お雑煮の下ごしらえをしながらでしたが。
ノートに書いた3年目の数字を、妻に見せました。妻は数字を指でなぞって言いました。「1,000万円って、見たことない数字」。それから、少し不安そうに聞きました。「でも、これ、使わないんだよね?」。
僕は答えました。「使わない。働いてもらう」。妻は「働いてもらうって、何?」と笑いました。その答えは、4年目の話です。この日、僕にはまだ、はっきり説明できませんでした。
代わりに、楊さんに言われていた質問を、妻と2人で確かめました。「この1,000万円は、5年でも10年でも、手を付けずにいられるお金ですか」。生活費6か月分の備えは、別の口座にある。店の口座も別。妻は「じゃあ、大丈夫」と、お雑煮の鍋に向き直りました。
夕方、楊さんから電話がありました。「三平さん、3年目は『減らす』年やったね。4年目は『育てる』年にしよう。慌てんでよか」。
このお金は、5年10年放置できるお金か。
04 3年目の未来の口座で、答え合わせ
3年目に、未来の口座がどう動いたか。1枚にしました。

左から順に。2年目の終わりの120万円。3年目に先に入れたお金が約80万円。春までは月5万円、家を売ってからは月8万円に上げました。車を手放して残ったのが約100万円。家を売って残った約800万円のうち、100万円は引っ越しの費用と備えの口座に回し、700万円を入れました。合わせて、約1,000万円です。
月8万円に上げられた理由は、単純でした。家と車を手放して、月に出ていくお金が約5万円減ったからです。そのうち3万円を先取りに上乗せし、残りは備えの口座と、生活のゆとりに回しました。我慢して増やしたのではなく、出ていく物を減らして、空いた分をそのまま未来に置いただけです。
そして、家と車を持っていない人へ。序章で「10年の道」も書くと約束しました。月8万円を先に入れ続けると、10年で960万円です(利回りを見込まない、入れた分だけの試算)。家の売却がなくても、同じ所に10年で届きます。僕は家で3年を買いました。それだけの違いです。
我慢で増やしたのではなく、出ていく物を減らしただけ。
05 3年目に、僕が変えた4つのこと

3年目に変えたことは、4つです。店の経費を全部並べて、売上より利益を見るようにしたこと。家を売って、借りた部屋に移ったこと。車を手放して、必要な日だけ借りることにしたこと。先に入れるお金を、月5万円から8万円にしたこと。
どれも、派手ではありません。新しいメニューも、新しい店舗も、新しい投資もない。減らしただけの1年でした。でも、減らしただけで、動かせるお金が120万円から約1,000万円になった。売上を上げるより、ずっと安い方法でした。
年明け、ナオミさんがぽつりと言いました。「先生、最近、怒らなくなりましたね」。自分では気づいていませんでした。固定費が減ると、心の固定費も減るのかもしれません。
その夜、妻が聞きました。「来年は、何するの?」。僕は答えました。「お金に、働いてもらう」。妻は「また、それ」と笑いました。4年目が、始まります。
減らしただけの1年が、いちばん動いた1年だった。
06 今日やること:持っているだけで出ていくお金を、1年分足す
今日やることは、1つだけです。「持っているだけで出ていくお金」を、1年分、紙に足してください。 家なら固定資産税と修繕の積み立てと利息。車なら保険と税金と車検と駐車場。使っていない物の置き場代や、解約していない物も入れます。
合計を見て、10倍してください。それが、10年で消える額です。手放すかどうかは、まだ決めなくて構いません。でも、その額を知らないまま10年過ごすのと、知ったうえで持ち続けるのは、別の人生です。
次の話は、4-1「投資は怖い。でも貯金のほうが、怖かった」です。1,000万円を前にした僕が、志波ファンドの傷を抱えたまま、楊さんに「投資は2種類ある」と教わる話です。
知らずに持つのと、知って持つのは、別の人生。
情報元
- 講座 第14回「毎月の発表会。焼肉食いながらでも」・第11回「このお金は5年10年放置できるお金か」・第3回「生活費6か月分は現金で」(講義ノートより)
- 3年目の数字はすべて三平の場合の試算(家の売却で残るお金 約800万円・車 約100万円・先取り 月5万円→8万円)。家と車の持つコストは、固定資産税 年十数万円・修繕積立 年約12万円・利息 年約24万円・車 月5.8万円の試算
※ この物語はフィクションです。数字は試算で、将来の結果を約束するものではありません(くわしくは「この連載について」)



